雑感

one's impressions

10年分

10年分

今週のお題「10年」

その男は、良い同僚に囲まれて楽しい社会人生活を満喫していた。そんなある日、唐突に一度目の災難が訪れる…脳脊髄液が減少してしまうと言う当時としてはレアな病に伏せってしまい。最終的に職を失ってしまいその日暮らしが始まってしまった。

 

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 ※画像はサンプルです。

 

それから半年ほどで退院は出来たのだが、健常者というには程遠い状態だった。五体満足になるまで1年半の時間を要した。神経系をヤラれてしまうと人ってのは本当に血肉と糞尿の塊でしかない。それを痛感した時、男の心は折れる寸前だった。

 

それでも、その男の胸の内には「必ず社会復帰してみせる!」と固い決意を秘めていた。そのかいあってか、社会復帰のチケットをGETした。

 

やっと掴んだチャンス。「辛い日々が続いたが、これからはちがうぞ!」と明るい明日を想像しながら青信号の横断歩道を意気も揚々と渡っていた夜、二度目の災難が非常にも訪れて来た。

 

その瞬間に固い決意も、神がかり的に掴んだチャンスも、一瞬で崩壊した。2台の車の不注意で。

 

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※画像はサンプルです、

 

赤信号を無視して交差点に入って来た1台目の車に右側面から衝突され、その衝撃で吹き飛ばされた男は、その先にある公園の金網に頭から突っ込んだ。その際、折れた金網の破片が頸部の動脈に刺さった状態で道路脇に転がった。

そして、そんな男にダメを押すかのように、道路脇の男に気が付かなかった2台目の車が、血肉と糞尿の塊とかしたその男の右半身の上を通りすぎていった。

男は失血死で一度絶命した。が、その男はツイていた。その現場がとある病院の真ん前で、そのまま集中治療室に運ばれ蘇生、そして再びこの世に戻ってきた。男は2度目の災難を乗切った。

そして、意識が戻ってから数日後、運転手の社会的地位を脅かさない事を条件に、完治するまでの生活の保証と示談金と言うなの口止め料を得たとき男はちょっと驚いた。あと、あらぬ事が頭を過った。地位と名誉を守るためだったら、どこの馬の骨かわからない様なヤツにでさえこんなにも金を積むのか…「体を張って稼ぐ」ってのも悪くないと。


それから…事故の怪我も回復し、プチ社会復帰してしばらくした時の事、三度目の災難がやってきた。夜の裏路地にて同伴者がカラまれていたので、仲裁に入るともみ合いとなり鋭利なナニかでまた首をやらたその瞬間、前回のことが脳内を過った。…金の匂いのしている風体のヤツに危害を加えられたら何が何でも示談に持ちこみ口止め料をせしめる…。

男に危害を加えたヤツの風体は正にそのものだった。男は首元を抑えながら刺した相手がタクシーに乗る寸前のところを引きずり下ろし、示談に持ちこんだ。

 

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※画像はサンプルです。

そして、二度目と同じ条件を引き出た。

 

その後、ざっと換算してみると会社員時代の給料ベースで換算すると約10年分金を手にしていた。一見、体を張って稼いだその金額に最初は喜んだが、それから暫くしてこの金と体の異常を感じ始めた頃、腐りきった己の本質に気が付き落胆した。